ブッダダンマ各論

ブッダの教えについて各論、雑感を述べていきます。初めての方はブログもどうぞ。http://mucunren.hatenablog.com

立体視

15年位前でしょうか、立体視の絵が一時期流行したことがあります。特に点の絵から立体が浮かび上がるタイプのものは、見えないと本当にただの点の集まりの絵でつまらないものです。

悟りもこれに近いものがあると思います。例えば日本人なら多くの人が桜が咲いたのを見て「美しい」と思います。 しかし、受を知り尽くしたなら、「世間で美しいと言われる桜が咲いている」と見えるようになります。

人は「美しい」と思った瞬間に喜びの受が生じています。 しかし、全く客観的に桜の花を見たら、その形と色を目で知覚するだけで、心は動きません。見えている画像は同じなのに、心の状態はまるで違うのです。

こう言う状態を「縁起が消滅した状態」とか「識受滅」などと呼びます。要するに全ての物事を主観でなく、ただ客観的に見る(目の感覚に限りません)ので、肉体的な感覚があっても感動して陶酔することもなく、嫌悪して忌み嫌う事もありません。 常に客観的に見えるので、「美しい桜」と見て「心が陶酔した自分」が生じません。

繰り返しになりますが、これはすなわち無明から生じる縁起の流れが消滅した状態です。貪瞋痴が減ればこの様に好むことも嫌悪することもなくなりますので、心は常に平静です。この様な状態は、実に静かであり、この様な静かさは最も高級な幸福とも言えます。苦が無いからです。