感情の発生過程を見ることは縁起を見ること
ここまで縁起について連続して述べてきましたが、これまで私のブログでもツイッターでも感情の発生過程の中にある身勝手さを探して、それを反省して改める方法をお勧めしてきました。
実はこの方法は縁起の中の無明を減らすことと同じなのです。
身勝手な心があって、外側(環境)と内側(心)の原因が合わさって感情が発生し、苦しむ(喜ぶ*1)訳だから、心の中の身勝手さを減らして苦を減らしましょう、と事あるごとに説明してきました。
これは無明が縁で識があり、、、受が縁で欲があり、、、生が縁で老死、苦が生じるという縁起の過程の話と全く同じなのです。
身勝手な心が「無明」です。無明が何なのかを知れば、無明を捨てることが出来ます。私も相当身勝手な人間でしたが、この方法で身勝手さを明らかに減らすことが出来ました。実はこの方法が縁起に直結していると見えたのは最近ですが、見えてみればブッダが縁起が見えれば苦が減らせると教えているのはなるほどその通りであると得心が行った訳です。
具体的には、通勤通学のときに交差点で赤信号になって、「急いでいるのに!」とイラっと来たとします。イラっとした時点で既に苦です。
この発生過程を見てみると「一秒でも早く目的地に到着したい」という身勝手な心(無明)があるので、赤信号という外側の理由と止まりたくないという内側の理由が合わさって、「止まりたくないのに止まらなければならない」という状態になります。「止まりたくない」という欲から生じた執着の心が、止まらなければならないという外界(環境)とかみ合わないので「止まりたくないのに止まらなければならない」という界が生じます*2。そして「イライラ」という感情によって苦になります*3。
しかし、もし急いでいたとしても「いいや仕方ない」と諦めて希望通りの結果を無理に求めない様に考えたり、「遅く出た自分が悪いんだし、悪い結果は自分の招いた種」と言う様に客観的に見られれば、赤信号位では全くイラっとはしません。三回信号待ちすることすら出来ます(遅刻を推奨している訳ではありませんが)。
このような感情の発生と消滅のプロセスを極めて詳細に見たのが十二縁起であり、この原理、仕組みさえ理解していれば普段の生活上で厳密に十二項目に拘らなくても無明を減らすことが出来ます。
喜ばしい、あるいは思わしくない事態が生じたときに、そこで感情が発生するのは無常で思い通りにならない、変化する外界(環境)に対して「こうなって欲しい」とか、「こうなって欲しくない」と考える身勝手、愚かさ、つまり無明があることが原因です。
無明を捨てれば、つまり身勝手に外界が自分の都合通りになる事を期待しなければ、こういう感情は生じません。そうなれば苦はありません。無明を完璧に捨てられなくても、捨てれば捨てるほど苦は減ります。
ブッダが縁起を重視するのは、ひとえにこの無明を把握して捨て去るためと言えます。カビの発生の仕組みを知らない人は、カビの発生を正確に抑えることはできませんが、仕組みの発生を詳しく知っている人は、カビの発生を抑えることができるのと同じことです。