ブッダダンマ各論

ブッダの教えについて各論、雑感を述べていきます。初めての方はブログもどうぞ。http://mucunren.hatenablog.com

結婚、妊娠、出産、育児 その2

*この話は深いダンマです。世間の常識的価値観とは相容れない四聖諦の見地からの内容ですので、その種の話が受け入れられない方はお読みにならない事をお勧めします。

 セックスによって妊娠すると、本人を含めて周囲の人も結婚と同様にそれを良いことだとして祝福します。何故でしょうか。それは自らの遺伝子を残す事に繋がるからです。

 しかし、もし妊娠、出産が掛け値なしに素晴らしく、子育てが尊い事なら、何故中絶したり、子供を捨てる親が居るのでしょうか。それは子供を育てるためには大変膨大な金銭、時間、労力などのコストがかかる、言い換えればリスクがあるからです。

 純粋に子供を育てる事が望ましく、めでたい事なら、孤児などがいようものなら皆こぞって里親になりたがるでしょう。しかし事実は違います。何故なら子供と言うのは普通の人にとっては「自らの遺伝子を持っているから尊い」のです。

 他人の遺伝子を持っている子供を、大変なコストを支払ってまで育てようと思う奇特な人は多くありません。多くないどころかむしろ大変稀であると言えます。その様な行為はダンマに沿いますが、と言うことは世俗諦の要求する「遺伝子の保存欲求」にはそぐわないからです。

 事実女性にとって妊娠出産は大変な危険を伴う行為であり、障害や死産などの可能性も含めて決して手放しで喜べる様な事ではありません。にも関わらず妊娠の事実を女性本人を含めて周囲の人も喜ぶのは「遺伝子を残す」と言う目的に沿うからです。

 これは性欲が駆り立てる方向に沿うと見ることも出来ますので、妊娠の祝福は性欲の充足の喜びと言うことも出来ます。複数の子供を設けた人ならわかるかも知れませんが、綺麗事を抜きにすれば自分の子供ですら気に入っている子とそこまでではない子、と言う差が生じます。親も「自分」と言う感覚があるので「自分の都合」で判断するからです。この様な差も肉体を残す欲求と、遺伝子を残す欲求にとって都合が良い、悪いと言う判断基準、つまり無明から生じる身勝手によって生じてきます。

 可愛い、気に入った子供にはどっぷり陶酔して溺愛し、気に入らない子供は邪険に扱う、酷ければ虐待し、殺すまでするのです。無明はこの様に勝手な振る舞いを生じさせる全ての苦の原因なのです。

 まとめると、結婚、妊娠、出産、育児と言うのは無明によって皆がめでたいものと思い込んでいるだけの概念で、実際には滅苦とは程遠い欲望と執着の原因になるものだと見えてきます。当然ブッダがこの様な行いを推奨することはありません。

 今回の話はかなり受け入れがたいと思う人も居るかも知れません。それは考え方が客観的事実ではなく、自分の欲望に支配されているからとも言えます。もし客観的事実が見られる様になれば、今回の話が全てが事実であり、苦の何たるかが新しく見えたことと思います。

 また、気に入らない事は無理をしてまで受け入れる必要はありません。そんな事は不可能だからです。ただし強烈に印象に残ったかと思いますので、後日見返してみると新しいことが見えてくるかもしれません。