ブッダダンマ各論

ブッダの教えについて各論、雑感を述べていきます。初めての方はブログもどうぞ。http://mucunren.hatenablog.com

怒りと性欲、その仕組み

ブッダの教えを見ていると、ほとんどが欲(特に性欲)と怒りの話と言う印象を抱くことがあります。

考えてみれば確かに人が苦しむ原因の大部分は欲と怒りなのです。

欲(性欲)は素早いもので、多くの男性は魅力的な女性が近くを歩いているだけで目が釘付けになり、その人との性交を想像したりします。既にその時点で大変な心のエネルギーを消費するので、苦なのですが、普通はそれが苦だとすら知りません。

性欲は個体の遺伝子を残す目的の欲で、個体が「生き残り続けたい」という一番強い欲の次に強い欲です。完全に客観的に見れば、これは自己中心的な欲望であり、我、身勝手さが原因の欲だと見えます。

仮にそう言う魅力的な女性と性交出来たとしても、それが好ましいものならその女性と性行為への執着はもの凄く強くなります。また、付き合い、性病、結婚、妊娠、子育てと言ったあらゆる苦労の原因となり得ます。

多くの人はそれが苦だと明らかに知らないので、ブッダ曰く「苦の海を回遊する」事になります。好ましい受(この場合はセックスの快感)の満足の威力で渇望とそれに伴う執着は際限なく増大し、無常による老死、嘆き、悲しみ、苦、憂い、全ての悩みが生じる原因になります。

女性の性欲も素早いことに変わりはなく、余裕がある状況なら好ましい男性がいれば一瞬で見つけます。また、女性同士で会ったときに、相手の顔、服装、アクセサリーなども一瞬で把握します*1。この外見チェックと同時に自分との比較も含めた格付(ランキング)がなされます。このランキングは上記の理由から非常に正確で、例えば好みの男性が同席するような場に自分より魅力的な女性が来るのを排除する目的等に活用されます*2

こういう欲から生じるあらゆる行為は、客観的に見られればとても疲れてうんざりする話だとわかってきます。これは人生の経験が多い人、例えばご年配の方の方が、若い人より理解しやすいかもしれません。

怒りもとても素早いもので、例えば横断歩道を歩いているのに車からクラクションを鳴らされ、カッとなって「何だこの車!?(怒)」と思ったりします。クラクションを鳴らした運転手も当然何かしらイライラして鳴らしているので、当事者が両方ともイライラして怒っています。

クラクションを鳴らされて驚き、そこから怒りが生じるまでおそらく一秒もかかりません。怒りを抱いている人はその間中地獄の住人(死人、亡者)になっているとすれば、人が死人になるのに一秒もかからないと言う事です。

実は怒りも「安全に生き続けていたい」「都合の良い状態で居続けたい」と言う我、身勝手さから来る欲望が原因になっています。なので、少しでも状況が不愉快や危険になると、自分の都合にそぐわない状況に対して怒りが生じるのです。客観的に考えれば、いつ死んでも良いと本心から思っている人なら、自分を殺してくれる相手に怒りを向けることはないのです。怒りは身勝手な自己都合から生じると言う仕組みも理解しておいて損はありません。

この様な欲や怒りは、もとをただせば客観的に物事を見られていないこと、つまり無明(愚痴*3)が原因です。無明があって「自分」という間違った感覚があるので、欲や執着が発生し、怒りもそれに付随して生じます。

仏教では良く貪瞋痴(欲、怒り、無知)の順で語られますが、発生原因の順で言うと、痴→貪→瞋になります。 しかし、六根の喜びは苦、という事が一番理解しにくいので、まず喜びの受に対する貪欲、次に気に入らない受に対する怒り(瞋恚)、最後に無明である愚痴の順番で説かれているのでしょう。

*1:女性が互いの外見をチェックするのは性欲が原因なのですが、詳しい話はこちらこちらをご覧ください。性欲だと認めなくても、他人の外見や服装をチェックする原因は欲望と執着です。これは反論の余地がありません。

*2:女性全員がそうと言う話ではありません。また、男性にもそう言う人はもちろん居ますが、女性から見た魅力的な男性は男性には正確に把握出来ない事も多く、狙っても女性ほど上手くいきません。それに男性は性交は望みますが、そう言う気を回す(回せる)人は多くない様に思えます。

*3:愚痴をこぼすの愚痴ではありません。愚かで無知なことの意味です。